現在、5GやIoT、AIといったICT領域の進化が進んでいますが、来るべき近未来の持続可能な都市の実現においては、これだけでは十分ではありません。住民一人ひとりがICTを余すことなく活用できる仕組みが必要です。
そこで、未来都市の実現に向け、「デジタルツイン」と「beyond 5G」の研究開発が進められています。これらの技術により、都市のあらゆる情報がリアルタイムで収集され、未来都市の中核を担うであろう自動運転サービスや物流サービスに利活用され、都市全体を一つのサービス空間として捉えたまちづくり(City as a Service)が実現できるようになります。
本プロジェクトでは、新たなネットワーク技術とデータ管理技術を確立し、これらの要素技術を活用して共創型デジタルツインを実現。さらには、国際標準化や社会実装を目指します。
具体的には、複雑な設定を要せずに参加者が保有しているIoT機器同士が自動的にネットワークを形成。都市サービスに必要となる情報を自動的に生成し流通させる、新たなネットワーク技術を確立します。このとき、住民が積極的に参加したくなるようなインセンティブの仕組みについても考案します。データ管理技術としては、生成、流通されたデータの改ざんを検知する技術や改ざん防止のためのデータの自浄作用を促すデータ管理技術を確立します。この際、分散型台帳技術として知られるブロックチェーンを活用した安心・安全なデータ管理システムを構築します。
さらに、これらの要素技術を活用した共創型デジタルツインの実現に向けて、LiDARセンサやドローンなどを用いてスマートセンサシステムのプロトタイプを作成し、株式会社ハフト(旧社名:ドローンワークス株式会社)と協力して柏の葉スマートシティにあるKOIL Mobility Fieldにて共創型デジタルツインの実証を行います。
次世代の情報通信インフラであるBeyond 5Gは、デジタルツイン実現にとどまらず2030年代のあらゆる産業・社会活動を支える基盤としての役割が期待されています。そのためには、5Gの特徴的な機能の更なる高度化にとどまらず、新たに「自律性」、「拡張性」、「超安全・信頼性」、「超低消費電力」といった機能の具備が必要であると言われています。本プロジェクトで確立する技術は、まさに、Beyond 5Gに求められている「自律性」、「拡張性」、「信頼性」の確立に繋がる技術です。
また、データ管理技術として活用するブロックチェーンも、Beyond 5Gと同じく我々の日々のあらゆる活動に安全を保障する技術として期待されています。現在は、仮想通貨や暗号資産の決済や取引の管理に使われていますが、それ以外の応用先への普及は進んでいるわけではありません。本プロジェクトを通して、新たなブロックチェーンの応用事例を実証し、普及の足掛かりとなることが期待できます。
最終的に本プロジェクトで実現を目指す共創型デジタルツインは、未来都市で求められるCity as a Serviceの要となるものです。将来的には、未来都市において多種多様なCity as a Serviceの創発を誘引することで、誰もが活躍でき、安心して活動できる「ヒト」中心の持続可能な都市の実現への貢献が期待できます。
2022年9月8日から2024年度まで(予定)
研究費名:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「Beyond 5G研究開発促進事業(一般型)」委託研究
(Beyond 5G国際共同研究型プログラム)
研究課題名:City as a Serviceを支えるデジタルツインを持続可能な状態で自己成長させるエコシステム
研究代表者名(所属機関名):金井 謙治(早稲田大学)